研修効果を高める5つの基本方針


Ⅲ 実践の有効性をイメージできることを大切にします。

Ⅳ ”実践できる”との認識を高めることを大切にします。

受講者の行動変革を促すには、実践への意欲と自信を高める必要があります。そのためには、実践の有効性をイメージできる・実践できるとの認識を持てることが重要になります。

実践の有効性のイメージづくり ”実践できる” との認識強化を受講者任せにすると、受講者間の研修効果のムラが大きくなります。プログラムに ”仕組み・仕掛け” を組み込むことが重要です。


実践の有効性のイメージの高まりが、実践意欲を生み出します。

実践の有効性のイメージを高める方法には、

◆実際に体験してみる。  ◆具体例を知る。

◆有効性を検討し、自身の言葉でまとめてみる。 などがあります。

 

実感を得やすいのは、実際に体験してみることです。

体験による実践の有効性のイメージづくりの例
       
  テーマ 実践の有効性のイメージを高めるための対応例  
  指導力の強化 研修で示された基本プロセスに基づく指導(ティーチングやコーチング)を、実際に受けてみる。  
  説明力の強化 わかりにくい説明・わかりやすい説明の双方の指示を受けてみる。  
  話しを聴く姿勢の強化 アイコンタクトや相づち・うなづきなどが、少ない相手と多い相手の双方の対話を体験してみる。  
  マネジメント・サイクル 計画-実施-確認・検証-反省・改善のプロセスでビジネスゲームを行い、結果を確認してみる。  

挨拶や返事のトレーニングも、少しの工夫(たとえば、”暗い挨拶・返事” ”明るい挨拶・返事” の双方を受けてみる)で研修効果が変わります。

その他にも、

・セオリーを理解した後に、効果を示すわかりやすい具体例を知ることで、実践の有効性のイメージが高まります。

・ケーススタディなどで実践の有効性を検討し、自身の言葉で言い表すことで、実践の有効性のイメージが高まります。


”実践できる”との認識を高めることも重要です。

セオリーを理解しても、”難しくて実践できない” などの否定的な思いが生まれると、実践への負担感が増すとともに、意欲や自信の低下を招きます。

実践に向けた一歩を踏み出すためには、”実践できそうだ” ”実践できる” との認識を高めることが大切になります。

 

実践できるとの認識を高める方法には、

◆演習の難易度を段階的に上げて進める。 ◆総合的な演習を自分の力でやりきる。

◆実践事例を知り ” できるイメージ ” を強化する。 ◆自身の行動計画を策定する。 などがあります。

この中で最も配慮が必要なことは、演習の難易度を段階的に上げて進めることです。

研修の途中で ”わからない状態” に陥ると、あきらめや不満・不安を招きます。難易度を段階的に上げて進めることで、”わからない状態” を防ぐことができます。

演習の難易度を段階的に上げ、理解度と実践力を高めたうえで総合的な演習を自分でやりきるのが、効果を高める一つの流れになります。

評価の実践力強化に向けた演習の流れ人事考課研修より

演習の難易度を段階的に上げ、総合演習につなげています。

 

  ➀セオリー毎にミニ演習を複数回実施し、一つひとつのセオリーの理解を深めます。

 

ミニ演習①(理解したセオリーに基づき評価する)一部のみ掲載 ※こちらの無断使用はお断りいたします。

業務に関する知識・技能が非常に高い田中さんは、今年度に配属となった佐藤君の指導役に抜擢された。田中さんの熱心な指導により、佐藤君の業務知識や技能の向上が効果的に進んだ。

田中さんは指導に時間がとられ、業務目標未達に終わった。ただ、最後まで目標達成をあきらめずに懸命に頑張っていた。


【設問】次の評価要素と評価基準に基づき、田中さんを評価してください。

 

 

  ②短めのケーススタディを複数回、討議を交えて実施します。自社制度に基づき評価を行い、実践力を高めます。

  演習(事務の加藤さんの評価)一部のみ掲載 ※こちらの無断使用はお断りいたします。

加藤さんは経営指導課で事務を担当している(入社8年目の7等級)。

~中略

加藤さんの仕事は、経営指導担当者から指示された資料の作成や経費の精算、出張手続きなどのサポート業務である。加藤さんは、それらの仕事は的確に行っていた。

~中略

これまで経営指導担当者が行っていた事務作業を、加藤さんに移したらどうかという話が持ち上がった。まず課長は加藤さんに意見を聴いてみた。すると加藤さんは「その事務作業はこれまでずっと指導担当者の仕事でした。”担当しなさい” と言われたら担当するしかありませんが・・・、今ひとつ納得できません。すみません」と言ってきた。

~以下省略


【設問】自社の評価表に基づき、評価してください。

 

 

  ③長めのケースでの総合演習を、個人演習 ⇒ グループ共有 ⇒ 自身の評価の改善点の検討 の流れで実施します。

   理解度と実践力を段階的に高めたうえで総合演習に取り組むことで、能力に加えて、意欲と自信が強化されます。

  演習(田中さんの人事考課)一部のみ掲載 ※こちらの無断使用はお断りいたします。

今年、主事になった田中さんは、IT企業A社の営業1課に属している。

~中略

田中さんは真面目さと人当たりの良さで、既存のお客様と良好な関係を築いている。

自社開発のソフトウェアについての理解度も高い。製品マニュアルをしっかりと理解し、それに基づく説明の練習も自主的に行い、正確でわかりやすい案内ができている。

 

ただ、自社開発のソフトウェア販売以外については、全てではないものの上司や先輩への依存が目立つ。ある時、顧客企業を定期訪問した田中さんは、先方から相談を受けた。それは、ファイルサーバーのバックアップ形式の変更であった。これまで経験したことの無い案件で、どのように対処してよいかわからず、即座に「ご要望を持ち帰り、後日ご連絡いたします」と先方に伝えた。

職場に戻った田中さんは、すぐに先輩に相談した。

~中略

先輩「バックアップ形式の変更ということだね」

田中「細かな仕様等は、相談しながら決めたいとのことでした」

先輩「なぜ、お客様は変更を要望したのかな」

田中「・・・それは、確認していません」

先輩「・・・そうか・・・。対応の進め方に関して、田中さんの考えを聴かせてくれないか」

田中「・・・ちょっとよくわからないもので・・・。どのように進めたらよいでしょうか」

先輩は田中さんに、お客様が変更を要望した理由を確認したうえで、ハードウェア課の担当者と相談のもと、対応を考えるよう指示をした。

指示通りに田中さんは進めたが、問題が発生するたび、先輩に相談を持ち掛けた。相談すること自体は悪いことではないが、”どうしたらよいのか” と答えを求めることが多く、結局、対応方法の多くを先輩が決めることになった。ただ、決められたことは着実に進め、この案件を無事に終えることができた。

 

加藤さんは社内における日頃の定型業務については、マニュアル等を遵守しミスをほとんどしない。仕事の管理もしっかりとできており、仕事の漏れを起こすことも無い。

定型業務でマニュアル等が無いものがあれば、独自にチェックリストを作成している。

 

先日、上司から「チェックリストを公開して、皆にも使わせてあげてくれないか」と打診され、見直しをしたうえで、職場の全員と共有した。それが非常に好評で、皆の仕事の効率向上に寄与することができた。

 

業務改善などは、指示を受けて提案することはあるが、自ら発信することはない。改善策が提示されれば率先して協力するが、加藤さん自身が改善策を提案するようなことはない。

~以下省略

 

【設問】主事用の評価表を用い、評価内容をまとめてください。

 
       

その他にも、

実践事例を知ることで、”自分にもできる” との認識が高まります。

具体的な行動計画を策定することで、実践への負担感軽減と自信向上につながります。

研修効果を高める5つの基本方針